eスポーツで五輪が変わる?
コンピューターやバーチャルリアリティー(仮想現実)の技術を使ったゲームで競い合う。そんな「eスポーツ」が五輪で採用される時代が近づいているのかもしれません。
国際オリンピック委員会(IOC)は「eスポーツ委員会」を新設しました。
「伝統的な五輪競技を補完し、強化する可能性を秘める」というのがトーマス・バッハ会長の説明です。
若者を中心に人気を集めているこうしたゲームは、高額の賞金大会が国際的に開かれているだけでなく、国内でも高校生の部活動に採用されるなど、広がりは目を見張るほどです。
すでにIOCとして初めての国際大会を今年6月にシンガポールで主催。自転車やアーチェリー、野球、モータースポーツ、チェスなど10種目に64カ国・地域の選手が参加しました。
IOCが関心を示す理由には若者がゲームに熱中するあまり、スポーツ離れが進む不安があります。スポンサーなどの巨大な商業的価値にも興味があるのは間違いありません。
しかし、五輪採用には懸念もあります。世界保健機関(WHO)は2019年にゲームのやり過ぎで日常生活に支障を及ぼす「ゲーム障害」を新たな病気として認定しました。国内でも自治体がゲームに費やす時間に配慮を求める条例を作った例もありました。
性別や年齢、身体的なハンディなどを超えて競い合えるのは、現在の五輪競技にはないeスポーツの利点です。どんな形なら若者の健全な育成を掲げる五輪と融合するのか。幅広い議論が欠かせません。
朝日新聞論説委員 西山良太郎