ディスられて逆に膨らむ地元愛
さいたま市内のホテル宴会場のスクリーンに大写しされたミュージシャンで俳優のGACKTさんが参加者に語りかけました。
「一緒に埼玉を盛り上げましょう」コロナ禍の中、3年ぶりに地元新聞社が催した賀詞交換会に、地元政財界から大勢が集まりました。4月の統一地方選を控えて、壇上に並ぶ県市町村の首長や議員は口々に「地元愛」を訴えました。
ただ、会場を埋めた参加者の注目を最も集めたのは映像で登場したGACKTさんでした。ヒット映画「翔んで埼玉」の主演の一人で、今年公開が決まった続編のPRです。監督らは実際に登壇しました。
埼玉県をディスる(けなす)漫画が原作で、東京都民から「ダサイタマ」「海なし県」などと虐げられてきた埼玉県民が立ち上がる物語です。最後は登場人物が地元愛に目覚めます。
続編は、そんな前作の流れをさらにパワーアップした内容になるそうです。そもそも埼玉は、民間調査会社による都道府県の魅力度ランキングで下位の常連です。毎年の順位に一喜一憂する周りの県とは違い、あきらめムードすらあります。そんな埼玉県民の郷土意識を刺激したのが前作でした。
全国をながめると、埼玉と東京と似たような関係は各所にあります。だからこそ娯楽を越えて、映画がヒットしたのでしょう。
いよいよ統一地方選です。地元愛の訴えが飛び交うでしょう。見過ごしてきた良さを再認識できるかもしれません。地域を考える好機にしたいものです。
朝日新聞さいたま総局長 山浦 正敬