現場一期一会(震災から12年に思う地元愛の力)

震災から12年に思う地元愛の力

東日本大震災から12年となるのを前に、岩手県沿岸を再訪しました。

2011年3月11日の発生から報道で関わり、釡石市には3年間にわたって駐在しました。5年前に関東地方に戻ってからも毎年出向き、被災地の復興ぶりを確かめています。

朝日新聞は震災翌年に被災者を集中的に取材した「千人の声」を掲載しました。そこで紹介した人たちを追跡し続けています。近況を聞くことで生活再建の一端が見えてきます。

複数の記者で担当する中、今年も3日間で8組10人と会いました。多くの人が懸念していたのが「人口が一気に減った」「高齢化が著しい」でした。

それらは全国の地方で共通する悩みです。ですが、被災地がほかと違うのは、復興できれいな市街や住宅地が整備された中で、暮らしが縮んでいることです。

三陸沿岸道路が全通した結果、海岸沿いの集落をつなぐ国道は車がまばらです。かつて復興工事のダンプカーが多数、行き来していたのがうそのようです。

「これが私たちの願った復興だったのか」。そう嘆く住民もいました。

しかし、前を向く人が必ずいます。みんなで悲しい思いをした被災地だからこそ優しいまちにしたいと声を上げる人がいます。自然豊かな地域の魅力を発信しようと動き始めた人もいます。支援をきっかけに都会から移住してきた若者らは、自ら挑んできた「課題解決」の手法を被災地外に広げようと奔走します。

地元を愛する人らの思いや力を信じて、これからも通い続けます。

朝日新聞さいたま総局長 山浦 正敬