寝ても覚めてもすぽーっ!(人類の限界はどこに)

人類の限界はどこに

マラソンランナーはどこまで記録を縮めるのか。その世界記録ラッシュに、驚きと素朴な興味がわいてきます。

9月のベルリンマラソンではエチオピアのティギスト・アセファ選手が従来の女子記録を2分以上縮める2時間11分53秒で優勝。10月にはシカゴマラソンの男子で、ケニアのケルビン・キプタム選手が初の2時間0分台となる2時間0分35秒をマークしました。

59年前にさかのぼりますが、ローマに続く東京で五輪連覇を達成したエチオピアのアベベ・ビキラ選手は2時間12分11秒の世界記録でした。もしアセファ選手が一緒に走ったとすれば、アベベ選手を楽々と振り切ることになります。

男子の記録の限界については、ひと昔前まで、大学などによる生理学的な研究や統計学的な分析の結果、2時間を切る予想はほとんど記憶にありません。しかし、いまや2時間の「壁」突破を疑う人はいないでしょう。

実は非公認ですが、4年前に壁は破られています。規定では認められていませんが、レースの先頭を走って記録を助けるペースメーカーが次々代わる方法で挑戦。ケニア人選手が1時間59分40秒で走りました。

記録向上の背景には、メーカーが開発した反発力の強い厚底シューズの効果を指摘する声もあります。医科学的トレーニングや栄養管理などを含め、ランナーを支える環境の進化にも、限界はみえません。

ローマ五輪では石畳のコースを裸足で走ったアベベ選手も、目を丸くしているはずです。

朝日新聞論説委員 西山良太郎