バレーボール男子の地殻変動
確かな変化の鼓動を感じさせる――バレーボール男子の「いま」をこう表現しても、あながち的外れではないでしょう。
今年4月、各国の有力選手が集うイタリアリーグのプレーオフでは石川祐希、高橋藍の両選手が活躍。中軸として、それぞれ3位、2位と優勝争いを演じる出色のプレーぶりでした。
2人を含む日本代表は昨年、世界16カ国が争うネーションズリーグで初めて3位に食い込んでいます。
一部のトップレベルだけの話ではありません。中学生の部活動で登録人数が2013年の5万812人から23年は6万491人に。高校でも3万5597人から5万853人へと1万5千人以上も増えました。
同じ時期でいえば、高校男子のサッカーやバスケット、野球、卓球、陸上、水泳といった伝統的な部活動はそろって減少しています。少子化で国内の多くのスポーツが競技人口の減少に悩むなかで、増加は突出した現象です。
その背景には高校生の部活動を描いた漫画「ハイキュー‼」の存在も見逃せません。週刊少年ジャンプで12年から8年半にわたって掲載され、今年公開された映画は75日間で699万人を動員しました。
振り返れば、五輪で金メダルに輝いたのは1972年ミュンヘン大会でした。その後は下降線をたどり、五輪の出場すら逃すこともありました。
漫画が導火線となった熱気と、実力を備えたスター選手の登場。その相乗効果が、どんな結果をもたらすのか。今夏のパリ五輪では注目競技の一つです。
朝日新聞論説委員 西山良太郎