14歳の金メダルと61歳の1勝
五輪には「より速く、より高く、より強く、共に」という標語があります。限界に挑むという趣旨でしょう。そこには年齢も含まれているでしょうか。
パリ五輪で印象的だったのは女子スケートボードです。ストリート種目の吉沢恋(ここ)選手とパーク種目のアリサ・トルー選手。2人の金メダリストは14歳でした。
瞬発力と体の柔軟性、そして恐怖心に打ち勝つ力が求められる競技です。帰国した吉沢選手は「競技前もよく眠れた。夏休みの宿題を持っていったけど、やれる時間はなかった」と振り返りました。
そもそも10代の活躍が目立つ競技ですが、物おじしない精神力に感服です。
もう1人、忘れ難いのが女子卓球のシャリャン・ニ選手でした。ルクセンブルクの61歳。初戦で30歳年下のトルコ選手に快勝。2回戦では世界ランク1位の23歳、孫穎莎選手(中国)と対戦。ストレート負けとはいえ、巧みなラケット使いと笑顔が絶えることのない姿に、観衆は足を踏み鳴らし、大きな拍手と声援を送りました。
19歳で中国代表となり、世界選手権団体などの金メダルを獲得したものの、五輪は移住後の2000年シドニー大会が初出場でした。コーチでもある夫と不動産経営に携わりながら、2人の子どもを育て、練習にも力を注いできました。
「明日よりきょうの自分がいつも若い」「学ぶのに遅すぎることはない」。そんなふうに唱え、一日一日積み重ねるのだそうです。
スポーツが映す人間模様の鮮やかさに目を奪われた五輪でした。
朝日新聞論説委員 西山良太郎