寝ても覚めてもすぽーっ!(「安打製造マシン」の罪と罰)

「安打製造マシン」の罪と罰

大リーグ史上最多の通算4256安打を放ったピート・ローズさんは、日本の野球ファンにも懐かしい名前でしょう。

シンシナティ・レッズなどで1963年から24年間にわたり3562試合に出場。左右の打席から安打を量産しました。ワールドシリーズ優勝も3回。闘志あふれるヘッドスライディングに「チャーリー・ハッスル」の異名がつきました。

しかし、彼の野球人生は暗転します。レッズの監督を務めていた89年に野球賭博への関与が発覚。球界から永久追放されました。

以来、処分の解除を求め続けましたが、認められません。実績だけなら確実視されていた野球殿堂入りもかなわず、今年9月に83歳で亡くなりました。

この光と闇の物語には、2年前に亡くなった池永正明さんの姿が二重写しになります。

高卒新人で20勝、5年余りで103勝をあげて天才投手と呼ばれながら、八百長をめぐる「黒い霧事件」に関与したとされ、70年に球界から追われました。05年に処分が解かれるまで、野球に関わることはできませんでした。

賭博を認めたローズさんと、受け取った金は使っておらず、八百長を一貫して否定した池永さんを同列には論じられませんが、元同僚やファンから2人の復権を支持する声が上がったことは共通しています。

野球賭博も八百長も、ファンの信頼を損ない、球界の価値を大きく傷つける重大な「罪」です。けれど、永久追放という「罰」は見合うのか。議論の解は容易にはみつかりません。

朝日新聞論説委員 西山良太郎