スポーツとAIの蜜月
人工知能(AI)の進化は、近年、目を見張るばかりです。その技術革新と問題の抑制を両立させるために、政府や国会などで検討や議論が進んでいます。
スポーツでも、その影響は甚大です。例えばサッカーでは3年前のカタールW杯で、審判を支援する仕組みとしてAIを利用した半自動オフサイド判定システムやゴール判定システム、ビデオアシスタントレフェリー(VAR)が使われました。スペイン戦でのゴールを生んだ「三苫の1㍉」も、そのおかげでした。
いずれも多数の高速カメラ映像とボールに内蔵したセンサーなどによるデータを解析し、数秒で判断を示す仕組みです。
もちろん、タックルといった接触プレーの判断など見方が分かれるもの多く、審判すべての代わりをAIができるわけではありません。現在でも最終的に判断を下すのは人間です。それでも、誤審を防ぐ効果は着実にでています。
ほかにも、英国で昨年、AI開発企業とプロの強豪クラブ、リバプールが戦術ツールのプロトタイプを共同開発したと発表。選手の発掘や、体力の向上と疲労といった健康管理などにも活用するクラブは増えているようです。
一方で懸念がないわけではありません。あるクラブのオーナーは「数学と複雑なアルゴリズムを適用すると、確率を市場よりも正確に評価できる。スポーツ賭博では大きな利点だった」と話したそうです。
AIが進化するほどに、勝敗を予想し、サッカーくじを買う人の楽しみは減るのではないか、と。
朝日新聞論説委員 西山良太郎