戦後の節目から未来を考える
もう30年も経つのか。
早朝の仕事を終え、東京都心のカフェで、モーニングを食べようとした時、けたたましいサイレンを鳴らしながら救急車がそばを駆け抜けました。
1995年3月20日朝に発生した地下鉄サリン事件です。世界で初めて、日常の市街で、猛毒の化学兵器がまかれました。
オウム真理教による一連の凶悪事件が次々と発覚しました。長野県の松本サリン事件や坂本弁護士一家殺害事件……。教団とは無関係でしたが、サリンの恐怖を悪用したハイジャック事件まで起きました。
担当記者の一人として、2カ月前の阪神大震災も相まって、強い不安に襲われたのを思い出します。警察幹部による「内戦」という表現が忘れられません。
そして今――。先の年末年始に朝日新聞が文化面で「1995年からの現在知」という連載を展開しました。8回にわたって、戦後半世紀の年からの社会や文化の変容を考える企画でした。
第1回では、映画監督の岩井俊二さんが当時を「震災とテロでさらに毒々しくなって」と表現しました。
ウィンドウズ95の発売を機にインターネット社会へと移り、人と人とのつきあい方が変わったようです。再開発の進む渋谷からは若者の居場所が減りました。この30年の出来事です。
連載は当時を振り返りながら将来に希望を見いだそうとします。
中東や欧州では戦争が現在進行形です。時には80年を迎える戦後の節目を振り返りながら、未来への教訓を模索したいものです。
朝日新聞立川支局員 山浦 正敬