寝ても覚めてもすぽーっ!(勝敗と競技性、魅力広げる分岐点は)

勝敗と競技性、魅力広げる分岐点は

来冬のミラノ・コルティナ冬季五輪で、新競技としてスキーモ(山岳スキー)が採用されます。山岳地帯を舞台に登り下りの総標高差が最高で1900㍍に及ぶ壮大で過酷な競技です。

国境警備隊の雪上訓練が発祥とされ、滑り止めのシールをスキーにつけて登るか、スキーをかついでブーツで尾根を上がり、急斜面を一気に滑り降りる。
スタミナに加えて、自然を克服する技術、そして勇気をレースの随所で感じるスポーツです。 

気になるのは、五輪で実施するのが距離の短い「スプリント」と男女が交互に周回する「混合リレー」になることです。標高差も計80㍍程度になり、競技時間も短くなります。

スポーツの「時短」にはメリットもあります。さまざまな制限を加え、競技が濃縮化されて見応えが増えた例も少なくありません。

山岳スキーはどうでしょうか。ダウンサイズされた「スプリント」は、誰が勝つか最後までわからない混戦が増えそうです。一方で競技の妙味はどこまで維持されるでしょうか。

連想するのは夏季競技のトライアスロンです。「遠泳と自転車のロードレースとフルマラソンを一度に競ったら」との発想が競技の原点でした。しかし、五輪は交通規制が短時間で済む短縮版が採用され、競技の普及も進みましたが、持久力の限界を試す独自性は薄れた面も否めません。

ファンに訴える魅力として、勝敗と競技性の均衡はどこにあるのでしょうか。
イタリアでの五輪で、スキーモの将来像がどう導かれるのか、気になります。

朝日新聞論説委員 西山良太郎